久々パソコンをさらっていたら珍しい原稿が見つかりました。
原文は当時のまま、20年ほど前に執筆した原稿です。
テーマは筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者と音声支援ソフトに関する話題です。
「障害者とコンピュータ」
「ビデオゲームが有害だって?昔、ロックンロールもそういわれたもんさ」
宮本 茂 氏(任天堂株式会社 ソフトウェア開発のチーフ プロデューサ)
みなさんは、ビデオゲームをどのような感覚で遊んでいますか?障害者とコンピュータどこにどういう接点があるのでしょうか。これについて、一つ考えて欲しいと思います。
私は先日、ある障害者の家を訪ねました。その方は、ALSという重度障害を持っていました。症状は体が思うように動かないうえ会話困難な方でした。
そこで、少しでもコミュニケーションを図れるようにするために、意思伝達装置を行政側が導入し、その指導を私がすることになったのでありました。納入は私が来る2週間ほど前にすでに行われておりました。
私は、彼のことを少し聞いていました。話によると、
「ファミコンをすることが出来る」と。
これが功を奏すとはこの時点では全く想像もしていませんでした。
早速、指導を始めました。起動するとWindows3.1が上がってきました。そこから、音声装置が起動し、動作し始めました。起動はしましたが、思うように動きません。困ってから、マニュアル、ソフトをとにかく見て、あれこれしましたが、うまくいきませんでした。私が、よく分からず、席を外すと彼が手足を使い、動かし始めました。私は「大丈夫かな?」と見ていましたが、さっき出来なかった私よりうまくやっていました。
この時点で私は、「彼に対して説明は必要ないな」と思いました。
彼はそのうえ、大して役に立たなかった私に対し、操作を続け「本日は、お忙しいところをお越しいただきありがとうございました」と入力し、私は目頭が熱くなる思いがしました。
このとき、ふと辺りを見回しました。なんとSFCが置いてあるのです。私は、ピンときました。私は、「これに馴れていたから、あれを使うことが出来た」と、推察しました。
私は、元来ゲーム機は道楽のために存在すると思いましたが、他の効果として社会進出、集中力を養うことも出来ると言うことに気付きました。
彼はコンピュータ制御を自分のものに出来た背景に、ファミコンが影響していたのではないでしょうか。
私たちは、五体満足を当たり前のように感じています。しかし、中には、そのような恩恵にあずかれなかった人もいます。
ゲーム機のもたらす影響は、どんな人に対しても大きいと思います。
みなさんの周りにも、話すことが困難な障害者の方々はおられると思いますが、彼らを陰で支えているのが、人でありゲーム機であると思います。
これからも、暖かい手をさしのべて欲しいと思います。
July 14,1996 おおくす@ながさき